『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』にみるDX事例


6月11日公開の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が封切り3日間で観客動員数25万人の大ヒットをしているとのことで見てきました。

鑑賞して真っ先に感じたことは、観客ターゲット層を大人にして、初めからグローバル展開を目指しているビジネスとしてのビジョン。

今までのガンダムシリーズの世界観が踏襲され、最新のデジタル技術を活用した新しいアプローチも実に効果的にハマっていると感じました。

具体的には「カメラマップ」というカメラ視線で立体的に映像を貼り付ける手法を多用してCG臭さを消し、ライティングや奥行き感なども含め、リアルな質感に徹底してこだわっている。

戦闘シーンなどこの上なくリアルで、ディテールの緻密さもふくめ臨場感も満点でした。

また繊細な人物描写に加え、謎の美女ギギ・アンダルシアの造形など、従来のシリーズとは全く異なるスタイリッシュな画面にしています。

わたしのような往年のファンも、新しいユーザにも刺さる作品になっていると思いました。

ところでこの「世界観」と「最新のデジタル技術を活用した新しいアプローチ」とは、企業活動においては、「経営理念」ならびに「DX」とも言い換えることができます。

企業理念とは、自社ならではの価値観を伝え、あらゆるステークホルダーに共感と協力を得るための核。そして、DXはITを活用した事業や業務の改革。互いが表裏一体の関係となり、企業の魅力として伝える。

どちらが欠けても、ユーザーの期待を上回る価値提供は難しい。
逆に言えば、映画であれ、他のサービス・商品であれ、上手く回っている企業はこの2つが揃っている印象です。

ところで『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は入場者を増やすマーケティングもうまいと感じます。

SNSの企画、入場特典やイベントなど各種のプロモーションが公式サイトで目白押しで紹介されているのですが、個人的にもっとも刺さったのが

  • 15分以上にわたる本編の無料視聴
  • 通常版と豪華版と2種類あるパンフレット

まず本編の無料視聴ですが、従来はこの役目を予告編が担っていたかと思います。
それを15分という制限時間があるにせよ、ネットでの無料開放はわたしは初めての体験でした。

これを見て連想したのが、動画配信サービスやアプリの良くある無料版です。

無料で顧客体験をさせる → 価値を認識させる → 有償バージョンに導く、という良くある購入フローが、映画でもはじまるとは思いもよりませんでした。

そして何より、映画館でしか入手できないパンフレット。

このパンフレットは通常版(1,100円)に加え、モビルスーツやメカのデザイン画の別冊も含まれる豪華版(2,500円)も用意されています。

内容は抜群に面白い!

DVDによくあるメイキング映像/裏方話しの小冊子版とでも言えばよいのでしょうか。
デザイン画は、映像化されないディテールに関しても、ここまで緻密な検討がされていることに驚きました。これらを読むともう一度映画が見たくなる。
わたし自身、すでにリピーター化がはじまっていることを感じます。

ともあれこの映画はターゲット設定から、作品力、プロモーションなどいろいろ気づくことがあるかと思いますので、興味があれば劇場にぜひ。

そして、経営者の方々にはいうまでもないことですが、自社の経営において、理念・ビジョンならびにDXの情報発信をいまいちど見直すことをおすすめします。