インターネットはその誕生時には情報の発信力の強さから、中小零細でも大企業に立ち向かうことの出来る一発逆転ツールとしての大きな期待感がありました。
その恩恵を被ったサイトも数多くあった中、昨今は誰もが認めるようにGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)をはじめとする大手企業が圧倒的な影響力を持っています。
例えば「デジタルエコノミーの罠 なぜ不平等が生まれ、メディアは衰亡するのか」(マシュー・ハインドマン著 NTT出版/2020年)には中小企業にとって、かなり厳しい現実が書かれています。
「第3章はさらに先に進んで、大企業や大ウェブサイトはコンテンツを利用者向けにパーソナライズするのがはるかに上手だということを示す。デイリー・ミー(日刊じぶん)で定義されるデジタルメディアは、多くの人の思いこみとはちがい、小規模コンテンツ生産者に有利にははたらかない。むしろ、リソースを持った人々に有利になる。お金、職員、データ、計算力、知的財産、固定した観衆をもつサイトが有利なのだ。」
(P.19からの引用)
とか
巨大サイトはリソース面で大きな優位性をもっているだけでなく、それ以上に決定的な優位性がある。手持ちのデータも多いのだ。データを収集し、保存し、整理し、分析し、絶えず更新するための インフラづくりはすさまじい投資を必要とする。これは小規模な新興企業がここまでうまくできるようなものではないし、それは単に必要なお金やハードや技能のせいだけではない。データは利用者のモニタリングから得られる。新興企業はモニタリングする利用者が圧倒的に少ない。AT&Tのチー ムが述べたように「コンペが進むにつれて、使う情報を増やすとほぼまちがいなく精度も上がった。 これは、なぜその情報に意味があるのかとか、その情報の貢献がそれほどでもないか一見して明らかではない場合にすら当てはまる」
(P.85からの引用)
などなど。
一言でいうと、一発逆転のイメージを持つネットの世界ですら、大手が有利だということです。
では中小企業はインターネット市場において、どう戦うのがベストなのでしょうか。
いわば「インターネット時代の企業ビジョン」が昨今問われているですが、当社も企業の公式サイトを数多く制作する中、ホームページ制作がこの企業ビジョンとうまくオーバーラップしないと良い結果につがながらないことを感じています。
そのためホームページ制作時に、「企業の目指す姿」を打ち合わせ時に必ず聞くようにしています。
この問いかけに対して、どのような経営の方向性を出していくのか、それぞれかと思いますが、例えば次のようなことにヒントがあると考えます。
1.サービスの属人化
上記の書籍「デジタルエコノミーの罠」にはユーザーを引きつける「粘着性(stickiness)」という言葉が何度も出現しています。更新性の高いコンテンツがそれにあたるのですが、中小企業が新しいコンテンツの量で勝負するのは難しい。
であれば、コンテンツの質・・・大手企業が苦手とすることが多い、サービス提供者のパーソナリティを前面に出すことが考えられます。具体的には各メンバーそれぞれの個性のあるコンサルティング力や顧客サポート力を高めること。
そのためには、提供するサービス自身も顧客に対して一律ではなく個別化することが求められます。ホームページに社員一覧を載せる情報発信も、その一環と考えます。
2.クラウドサービスの利用
さまざまなクラウドサービスを導入することや、新しいアプリを社内で試すことは、大手企業がなかなか真似できないことです。これはかつて大手企業にいたわたしの経験からもいえます。
そもそもクラウドサービスの導入は、既存の部署や業務の担当者をなくすことにもつながります。
その意味でも、社長の一存で柔軟に組織とやり方を変えられる中小企業だからこそ実現できる、新しい取り組みと言えるのではないでしょうか。
特にGoogle WorkspaceをはじめとするGoogleの各種サービスは、あらゆるところにAIが使われており、業務改善だけではなく自社のサービス企画に参考になることが多いので、導入することをおすすめします。
3. 顔の見える企業化
GAFAMの社長と言って、親近感を持ってすぐ顔がイメージできる人はそう多くはないはずです。
前述のサービス属人化とも関わりますが、中小企業は社長自身が自らのサービスの広告塔となり、前面に出てPRする姿が求められるはず。結果として、「あの社長のすすめるサービスであれば買いたい、間違いがない」と思っていただけるような企業の形が、望むところではないでしょうか。これはわたし自身、経営者として常に意識していることです。
こちらで紹介した本は、上記のように空想のインターネットと現実のインターネットについて冷徹な視点で述べていますので、経営幹部の方は一読をお勧めします。
「デジタルエコノミーの罠 なぜ不平等が生まれ、メディアは衰亡するのか」(マシュー・ハインドマン著 NTT出版/2020年11月)※Amazonサイトへのリンク