映画『ブレードランナー2049』におけるAIの究極の姿

カルト的な人気を持つ『ブレードランナー』(リドリー・スコット監督)の続編である『ブレードランナー2049』を観てきました。

わたしは旧作の『ブレードランナー』の大ファンで、かつての上映時には、映画館に何回足を運んだかわかりません。今回、30年ぶりに旧作のパンフレットも目を通しました。
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このブレードランナーでは、いまや流行のキーワードである「AI」についても語っており、2つのタイプの登場人物を通して、近未来のヒューマノイド (人間型)AIの姿を予言していると感じました。

2つのタイプとは・・・1つが肉体を持つものです。

その進化の末にあるのは、人間を超えた戦闘能力であったり、人間と同様の生殖能力であったりする訳ですが、さまざまなタイプのレプリカントが、その未来の形を伝えます。

もう1つのタイプが肉体を持たないものです。

ホノグラムによってその姿が形づくられ、携帯端末をONにして登場する。しかし電源が得られない環境では、幻のように消えてしまう。

その容姿と会話は完璧で、恋人以上の良き理解者になり、ハードな任務によりすさんでいく主人公の心を癒やします。

両タイプに共通するのが、これがまさにこの映画の真髄となるテーマな訳なのですが・・・AIが「悩む」という感情を持つこと。

短い寿命に悩み、リアルな肉体を持たないことに悩み、移植された記憶しか持たないことを悩む。

「悩む」ことは通常、良くない意味に使われることが多いと思います。しかし悩むことは人間ならではの特権。悩む姿を通して、人間とは何かの根源的な問いを観客に投げかけている。

いまわれわれが漠然と不安に感じる社会の未来像を見事に具現化し、その映像はエキサイティング。動と静の対比が素晴らしく、静謐な風景のシーンはタルコフスキーの映像を喚起させます。2時間43分の上映時間があって間でした。

ちなみにこの映画を観に行く前に、『ブレードランナー2049』公式サイトに、ブレードランナーの舞台である2019年から2049年の間の出来事を題材とした3つの短編ムービーが載っていますので、それを事前に観ることをオススメします。

特に渡辺信一郎監督によるアニメ短編『2022:ブラックアウト』は素晴らしいです。

『ブレードランナー2049』公式サイトはこちら>>

なお以下はリドリー・スコット監督による前作『ブレードランナー』をまだ観ていない方へのメッセージです。

前作『ブレードランナー』を事前に観ておいた方が、新作『ブレードランナー2049』の面白さが大幅にUPしますので、前述の3つの短編映画とともに必見です。

その『ブレードランナー』にはバージョンが色々あって、どれを見たら良いのか悩む方もいるかと思いますが、オリジナル劇場公開版かインターナショナル劇場公開版が個人的には推しです。

理由として、一番わかりやすく、ラストに希望が持てるからです。

特に『ブレードランナー2049』でも大事な役として登場するデッカード(ハリソン・フォード)の内向的なモノローグが、映画に深みを与えていますので、モノローグがカットされたファイナルカット版やディレクターズカット版ではなく、劇場公開版をオススメします。

※ちなみにオリジナル劇場公開版とインターナショナル劇場公開版の違いは暴力的なシーンの有無など、大きな違いはないのでどちらでも大丈夫です。

あと最後に・・・
この『ブレードランナー2049』を見る際には、IMAXならびに3Dのベストの環境が良いかと。ビジュアル面だけではなく、音響が素晴らしかったです。何はともあれ圧倒的な臨場感です。

人間とは何かという根源的な問いを投げかける『ブレードランナー2049』、また旧作のように何度も映画館に通いそうです。