「ウルフ・オブ・ウォールストリート」原作は新しいタイプのビジネス書


レオナルド・ディカプリオ主演で公開中の話題の映画、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の原作を読んでみたところ、娯楽小説ではなく、新しいタイプのビジネス書としての印象を強く持ちました。

品が無いと一蹴することもできる代わりに、著者の創業社長ならでは視点が至るところに散りばめられていて、色々な気づきを得られる。

例えば仕事に対する姿勢の記述では、

どんな悩みであれ、金で解決しろ! 自分の悩み事に、正面からぶつかれ! 今すぐあれこれと金を使いまくれ! 自分を追いつめろ。背水の陣を敷け! 成功以外に道がないところまで、自分を追いつめろ。 失敗したら手のつけようもないほどの状況に身を追い込んで、必死になって成功しろ!

みたいな経営の最重要マターであるモチベーションのことが語られている。

「金で解決しろ」とか「金を使いまくれ!」はともかく、背水の陣を敷かなければ事業を続けることが難しいことは経営者の多くが賛同するはずです。

僕も自営になって今までやって来れたのは、退路を絶ったからだと断言できます。

成功哲学としては

だから、私は口を酸っぱくして言うんだ! 態度が人を作るのだ! 金持ちらしく行動すれば、絶対に金持ちになれる! 誰よりも自信を漂わせていれば、人々は君の助言に従うようになる。大成功しているように振る舞えば、そしていまここに立つ私のように行動すれば、君はきっと成功する!

みたいなこれまたオーソドックスなセオリーが語られる。

(※上記原作「第8幕 ヘボ靴屋」の章からの抜粋)

また社員へのマネージメントについては

私はダニーに、いつも言い聞かせていた・・・ 一部の病的な者は例外として、人間は正しいことをしたいという意識下の願望を持っている、だからこそ集会の度にそれを意識下に刷り込まなければならない。そうすれば社員たちは、電話越しににっこり笑って顧客の目玉を刳り抜きながら、自分たちの強欲や同僚たちから認められたいという利己的な欲望を満たしながら、自分は正しいことをしているのだと無意識で信じ込むのである。そんな心理状態を作り上げてのみ、社員たちに、彼ら自身でも決してできるとは思ってもみなかった目標を達成させられるのだ。

こんなことは、組織づくりをして事業を大きく成長させた経営者でないと語れないことでしょう。

(※上記原作「第24幕 政権交代」の章からの抜粋)

また流通に関しては

そして、何かの拍子に過剰在庫を抱えてしまったら、すぐに安売屋にたたき売って、できるだけ早く損切りするんだ。この商売、損をするなら早い方がいいが鉄則だ。倉庫に死に筋在庫が山積みというのが最悪さ。さらに、百貨店とのパートナーシップも大事だ。商品には、いつでも責任を持ちますという態度を示せ。もし自社商品が売れなければ、値引きの利益保証の原資も出しますと言うんだ。そうすれば、ほどほどのセールで流通在庫をさばきながら、利益も確保できる。
 一方で、直営店をできるだけ早く、展開することだ。君たちはメーカーだ。だから、直営店を持てば、製販一貫で、中間流通のマージンも小売流通のマージンも取れる。さらに、死に筋の商品をさばくにも、直営店が一番だ。セールで処分すればいいんだから。そうすれば、ブランドに傷がつく怖れもない。

(※上記原作「第27幕 若死にするのは善人だけ」の章からの抜粋)

これ以外にも、営業社員がかける営業電話のスタンダードの本数から、なぜ経営するストラットン・オークモント社が辺鄙なところにオフィスを構えたのかなど、色々なところに創業社長としての経営哲学を垣間見ることができて、大変興味深く読むことができました。

この本は、特に経営者の方が読むと色々ヒントになることが得られると思います。