フォトジェニックとはどのようにして生み出されるのか

「フォトジェニック(photogenic)」という言葉が、多く使われるようになってきたのはここ数年ではないでしょうか。

日本では「写真映えする風景・モノ」という意味で使われることが多いですが、いうまでもなくSNSの流行とともに、周知されるようになった印象です。

昨今は、特に観光地などで利用者のSNSでの情報発信が、集客の大きな要になる時勢です。
そのため、SNSネタに直結するフォトジェニックとなりうる観光リソースについて、今まで以上に検討されていくことは間違いないでしょう。

「撮影スポット」という言葉は昔からありますが、「フォトジェニック」は、自然の風景に加えて、何がしらの人工的なものを含めた姿を対象にしていることが多いと、個人的には感じます。

わたしがもと建設業界の人間だからそう感じるのかも知れませんが、あらゆる観光地にとってSNS拡散につながる必勝のフォトジェニックとは、「豊かな自然美の景色」と「美しい建築」が組み合わさった風景なのではと思います。

建築は立地と切り離せないものなので、その土地ならではの美しい自然を背景にした素晴らしい建築を見ると、圧倒的され、長く心に残ります。

わたしがかつて建築系の学生だったときに見た、巨匠ル・コルビュジエの設計による「ロンシャンの礼拝堂」を目の前にしたときの感動は、夕暮れ時の「東京タワー」や紅葉の「京都 東寺の五十塔」を見るときの感動とある意味、共通しています。

すなわち自然と建築がお互いに魅力を高めているのです。

今年の正月休みに「星野リゾート トマム」で年始の休暇を過ごした際にも、「霧氷テラス」や「アイスヴィレッジ」の氷の建築、そして安藤忠雄氏の設計による「水の教会」で同じような建築と自然が一体となった素晴らしい風景を堪能しました。

こちらがアイスヴィレッジの全景です。ice

こちらが水の教会の内部からガラス越しに外を眺める風景です。kyokai

良い風景は次の旅への思いを誘う。
「水の教会」を見たら、次は世界遺産にもなったアスプルンドの「森の教会」にも行かなければと強く思いました。

ちなみに建築についてもう少し語るとすると、高知県の檜原村のように、著名建築家である隈研吾氏の数々の建築で町の知名度自体が一気に上がった例もあります。

スケールの大きい建築は、造形的にもインパクトを与えやすく、写真が拡散しやすいとも言えます。

ただ予算の制限などで大型の新築プロジェクトが実現できない場合でも、歴史的建造物を再生させたり、例えば「アイスヴィレッジ」のように企画型のエリアを実現したり、アイデア次第でフォトジェニックを生み出せる余地は多分にあるはずです。

そう考えると、現地を訪問してくれた方に、感動をプレゼントしようとする熱い思いと企画こそが、結果としてフォトジェニックの風景を生み出す源となり、それがSNSで拡散されて新しいお客さんを生み出していると言えそうです。

SNS拡散だけを狙った上辺だけのフォトジェニックは、簡単にその薄っぺらさが見抜かれてしまうでしょう。
フォトジェニックは狙って出来るのではなく、結果として出来るのだということを強調したいです。

ともあれこの「星野リゾート トマム」はまた足を運んでみたいと感じました。